これまで本学が行ってきた研究からPMMAに低エネルギー電子線(LEB)を照射すると残留モノマーが顕著に減少することがわかっている。この結果は臨床に大いに役立つと考えられる。 本研究はLEB照射が各種レジン系材料の物性に与える影響を調査・検討することを目的としている。平成20年度は本研究に適した規格の試料を製作し、LEB照射試料と未照射試料の硬さ試験を実施した。 LEB照射の対象は加熱重合レジンのアクロンクリア(ジーシー)とし、試料サイズは20×20×8mmで条件ごとに3枚ずつ製作した。試料製作に際し、粉液比および重合スケジュールはメーカー指示に従った。LEB照射条件は(1)未照射(2)加速電圧110kV、吸収線量135kGy(3)加速電圧110kV、吸収線量270kGyとした。LEB照射後、各条件の試料はロックウエル硬さ試験により表面硬さを測定した。測定箇所は1試料につき5点とした。条件(1)の平均は106.66、条件(2)の平均は106.46、条件(3)の平均は106.21であった。 ロックウエル硬さ試験により得られた計測値をt検定と一元配置分散分析を行い検討した。その結果からは有意な差は認められなかった。 この結果から、対象とした義歯床用レジンに対してはLEB照射を行っても表面硬さを低下させないことが示唆された。
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