チタンインプラント周囲の骨形成を促進できる表面処理方法として、プラズマ溶射法によるハイドロキシアパタイト皮膜形成が実用化されているが、臨床においては、皮膜の剥離や溶解などの問題点も指摘されている。我々は、水酸化カルシウム(Ca(OH)_2)粉末と水を混練することにより調整したスラリー状処理剤中にチタン基材を埋没させ、そのまま加熱処理するという簡便な処理プロセスを用いることにより、その表面に骨形成の促進を期待できるチタン酸カルシウム皮膜を形成出来ることを明らかにした。本研究では、このプロセスにおける処理条件の最適化をおこない、さらに、小動物内における骨形成を評価した。 最初にスラリー処理における熱処理温度が、形成皮膜に与える影響を調査した。600℃以上でチタン基材を処理した場合、その表面に、結晶化したチタン酸カルシウム皮膜を形成され、擬似体液液中において、リン酸カルシウムを迅速に析出できることがわかった。一方、処理温度を上げると二酸化チタンの厚膜が同時に形成し、皮膜の密着強度が低下する。次に、Ca(OH)_2スラリーにナトリウムイオンを混合させ、皮膜の生体適合性の向上を試みた。1MのNaOHまたはNaCl水溶液を用いてスラリーを調整すると、その表面に、チタン酸カルシウムとチタン酸ナトリウムの混合皮膜が形成され、リン酸カルシウム析出性能は向上するが、半面、形成する皮膜は厚く、機械的強度に劣ること示唆された。最後に、Ca(OH)_2粉末と水を混練したスラリーを用いて、熱処理温度600℃で処理したチタンを、ラットに埋入して、その周囲組織を観察した。7日後、周囲組織では、活性な新生骨形成が観察され、新生骨の一部は試料と直接接していることがわかった。
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