Msx1は器官形成の際、上皮-間葉相互作用の認められる様々な組織に発現するホメオボックス遺伝子であるが、両生類の脱分化をおこした領域の細胞に強く発現している。このことより、Msx1が組織再生の重要なカギとなる可能性が高い。Msx1遺伝子の欠損マウスは、口蓋裂、下顎骨の低形成、歯の発生停止などをきたし、死亡する。さらに、症候群を伴わない、様々な形状の唇顎口蓋裂と歯牙欠損を保有する家系からMsx1のexon1にmutationの存在が確認されており、顎口蓋、歯牙の発生にMsx1が不可欠であることが示されてきた。 本研究の目的は、最終的にはMsx1の時期・組織特異的発現を制御する領域、つまり調節エレメントを解明し、遺伝子発現をコントロールすることである。特定の場所に、必要なタイミングでMsx1の発現を呼び起こすことが可能となれば、骨や軟組織、さらに歯牙などの再生を促すことも不可能ではなく、唇顎口蓋裂治療を含む再生医療に応用できる可能性が高い。そこで今回、C57BL6マウスより抽出したゲノムDNAからcDNAより3'約10kbpの領域をPCRにて断片的に得たものをシークエンスを確認した後、ライゲーションし、deletionしながらプロモーターアッセイを行った。さらにdeletionを行ってゆき、昨年作製したアデノウイルスベクターに組み込んで、分化細胞に対する脱分化能を見ていく予定である。
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