補綴治療の中では、角度計測や平衡性を必要とする場面がある。愛知製鋼社製のMIセンサを内蔵させた姿勢センサは、X、Y、Zの3軸の全方位の姿勢角度の計測が可能であり、PCのリアルモニタ上で確認することができる。また、姿勢センサとPCをワイヤレスで接続しており、姿勢センサ自体も極めて小さいため、計測対象をほとんど拘束しない。さらに、デンタルナビゲータと名付けた歯科検査・治療支援機器の開発も行っている。 今回我々は、本システムに改良を加え、これまで1つであったセンサ部を2つ同時に使用することで、センサ間の相対的な角度変化を計測できるようにし、姿勢センサの取り付け自由度を向上させた。この新たなシステムを全部床義歯製作時の上顎仮想咬合平面設定に使用することを目的とし、有効性の検討を行った。 方法は、咬合堤平面と模型基底面のずれを目視で確認した後、咬合堤を模型から外した状態で調整を行った。平面が一致したと思うまで繰り替えし、これをコントロールとした。次に姿勢センサ使用時には、まず模型基底面と咬合堤調整用ヘラにセンサを設置し、模型基底面と咬合堤調整用ヘラのヘラ部の平面を一致させた。その後、PCモニタ上で角度変化を確認しながら、咬合堤を調整した。調整後は、正面観、側面観をカメラで撮影し、PC上で角度を測定した。また。同時に調整時間も測定した。被験者は臨床経験5年目の歯科医師が行った。 結果は、正面観、側面観ともに目視の方が約0.4°精度が高くなったが、有意差は認められなかった。調整時間は、センサを使用した場合、コントロールに比べ約半分となり、有意に短い時間となった。 今後は、システムの改良と姿勢センサ精度の向上を行い、臨床で応用可能なシステムに改善していく予定である。
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