従来、口腔内の骨欠損に対し臨床的に様々な骨移植材や骨造成法が用いられている。しかしこれらは臨床的観点からのみ評価されていることが多く、生体内での動態や治癒様式等、十分な科学的根拠に基づいて応用されているとはいい難い。これまでの研究において、創傷治癒の安定化さえ計られれば、既存の細胞・血液供給・血餅に由来する足場・成長因子により生体本来の治癒能力を引き出し歯周組織・骨再生が十分に期待できることが示唆された。そこで本研究では外科的侵襲を最小限に抑えたうえで有茎自家骨と注入型吸収性人工骨の利点を最大限に利用することに着眼し、1)有茎自家骨トランスポートとCPC(リン酸三カルシウムセメント)を併用したアプローチの可能性について、および2)その歯周組織再生・骨造成効果について実験動物を用い組織学的に評価・検討することを目的とした。 初年度は抜歯窩における有茎自家骨トランスポートとCPC併用の顎堤保全の可能性について検討を行った。ビーグル成犬(雄2頭)を用い上顎両側前歯において対照側は抜歯後、骨補填材をなんら使用せず、実験側は抜歯窩内にドリリングにより骨壁の不完全骨折を行い、空隙にCPCの充填を行った。8週の観察期間を経た後、動物の安楽死を行い通法に従って脱灰薄切標本を作製しヘマトキリンエオジン染色を行った。対照側では唇側の骨吸収が著しく認められたのに対し、実験側ではCPCの残留が認められたものの新生骨形成がCPC周囲に認められ唇側の骨吸収も抑制されていた。これらの結果をふまえ、次年度に下顎臼歯部歯周組織欠損における上記アプローチを用いた歯周組織再生像および骨増生について組織学的評価(病理組織所見・組織形態計測)検討を行う予定である
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