従来、口腔内の骨欠損に対し臨床的に様々な骨移植材や骨造成法が用いられている。しかしこれらは床的点から評価さていることが多く、生体内での動態や治癒様式等、十分な科学的根拠に基づいて応用されているとはいい難い。以前の研究より創傷治癒の安定化さえ計られれば、既存の細胞・血液供給・血餅に由来する足場・成長因子により生体本来の治癒能力を引き出し歯周組織・骨再生が十分に期待できることが示唆された。そこで本研究では外科的侵襲を最小限に抑えたうえで有茎自家骨と注入型吸収性人工骨の利点を最大限に利用することに着眼し、有茎自家骨移植(BS)とリン酸三カルシウムセメント(CPC)を併用したアプローチの可能性について、およびその歯周組織再生・造成効果について実験動物を用いて組織学的に評価した。 実験動物としてビーグル成犬(1~1.5歳雄 4頭)を用いた。前処置として下顎両側第2、第3前臼歯おさび弟1後臼歯の抜歯を行い、3か月の治癒期間を経て両側第4前臼歯の近遠心部に1壁性骨欠損(5×5×3mm)を外科的に作成し、1) BSのみ2) CPC充填のみ3) BS+CPC充填、および4) コントロール(無処置:OFD)の4処置を無作為に施した。8週の観察期間を経て動物の安楽死を行い、各処置の歯周組織再生に及ぼす影響について組織学的に比較評価を行った。OFD群では歯肉弁が陥落し歯周組織再年はほとんど認められなかった。BS群では歯根面上の新生セメント質に沿って新生骨形成が認められた。一方、CPC使用群では一貫して生セメント質と機能的配列を有する歯根膜繊維を認めた。特にBS+CPC群においては既存骨から有茎自家骨片およびCPC上に連続して新生骨形成が顕著に認められた。以上のことからBSとCPCの併用は1壁性骨欠損においても効果的に歯周組織再生を促すアプローチの一助になることが示唆された。
|