研究概要 |
より早期にオッセオインテグレーションを獲得する方法として, チタンの表面改質は世界中のトピックスであり, 研究者がしのぎを削っている. インプラント表面への骨結合のみでなく, 粘膜貫通部への軟組織の結合であるティッシュインテグレーションの概念が生まれ, 粘膜貫通部にも粗な表面性状をもつインプラント体が使われ始めているものの, 改質されたチタン表面が歯肉上皮細胞の運動性に対し, どのような影響を及ぼすかについてはほとんど報告されていない. そこで本研究では, さまざまなチタン表面における細胞動態をリアルタイムで3次元的に観察し, 運動性の評価をすることで, オッセオインテグレーションだけでなく, ティッシュインテグレーションを可能とするチタンインプラントを開発することを目的とし, 本研究を計画した. まず, さまざまな表面性状をもつチタンディスク(機械研磨, 削り出し, ブラスト処理, エッチング処理)を作製した. 次に, 各チタンディスクにマウス正常歯肉上皮細胞(GElcell)をSFM-101培地中にて播種し, 細胞がディスクに接着するまでCO2インキュベーター内で培養した. まず, 細胞の運動性に関してリアルタイム解析を試みたものの, 有意な違いは認められなかった. また, 超音波で細胞を刺激後, 経時的にさまざまな遺伝子発現をリアルタイムPCRにて検討した結果, 組織修復や細胞増殖, 血管新生に関わるCCN/CTGFがティッシュインテグレーションを検討する上で注目すべきタンパクである可能性が示唆された. 一方, ストレスマーカーであるChromograninAを検討し, 日内変動に関する示唆が得られた. 今後はこのCTGFやChromograninAに注目し, ウエスタンブロッティング法などを用いたタンパクレベルでの発現の検討をしていく予定である.
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