研究概要 |
より早期にオッセオインテグレーションを獲得する方法として,チタンの表面改質は世界中のトピックスであり,研究者がしのぎを削っている.インプラント表面への骨結合のみでなく,粘膜貫通部への軟組織の結合であるティッシュインテグレーションの概念が生まれ,粘膜貫通部にも粗な表面性状をもつインプラント体が使われ始めているものの,改質されたチタン表面が歯肉上皮細胞の運動性に対し,どのような影響を及ぼすかについてはほとんど報告されていない.そこで本研究では,さまざまなチタン表面における細胞動態を評価することで,オッセオインテグレーションだけでなく,ティッシュインテグレーションを可能とするチタンインプラントを開発することを目的とした. まず,マウス正常歯肉上皮細胞(GE1細胞)を使用し,3次元培養システムを用いて培養し,メカニカルストレスを加えることにより炎症を誘導させた.チタン表面に接したGE1細胞にメカニカルストレスを加えると,炎症誘導物質として知られるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)のmRNAやタンパクの発現が亢進し,プロスタグランジンE2の産生も増加した.また,その過程でMAPKシグナル経路やNFkBシグナル経路が活性化することが明らかとなった.さらに,2000kDaのヒアルロン酸を作用させることで,MAPKシグナル経路やNF-kBシグナル経路が抑制され,またCOX-2やプロスタグランジンE2の産生も低下することから,メカニカルストレスにより誘導される炎症反応が抑制されることが明らかとなった.
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