研究概要 |
インプラント治療は, 他の補綴治療と比較して治療効果が大きく, 患者のQOLの向上に寄与してきたことは間違いない. しかし, 本治療法の欠点である患者への侵襲を小さくすることと, その治療効果の高いエビデンスが必要とされていることも事実である. インプラント治療は臨床に浸透しているにも関わらず, 前向き研究による評価は稀有である. 欧米において従来行われてきた主な判定方法に, ランダム化比較試験が挙げられるが, 歯科領域, とりわけインプラント治療でこの試験を行うことは, 実質不可能といえる. なぜなら, 患者の希望にかかわらず治療法を決定しなければならないため, インプラント治療でランダム化比較試験を行うことは倫理上の大きな問題を抱えている. したがって, 信頼性の高いエビデンスが生まれることはなかった. そこで, マッチングを用いて様々な治療効果を判定する方法が行われてきた. マッチングとは, 性別, 年齢などを試験群と対照群で合わせることで, これらの因子の介入を排除する手法である. しかし, 口腔内条件が様々で, その精度は高いとは言い難く, また多方面からされるべき治療効果の評価方法も単一的であった. そこで我々は, インプラントオーバーデンチャーについて, 口腔内の条件までもマッチングさせた後ろ向き研究を行ってきた. その結果, オーバーデンチャーの有用性が明らかにできた. しかしながらこのオーバーデンチャーは従来型の技術である上, 後ろ向き研究であるので, 要因の交絡が問題であった, 一方, 近年は, 下顎無歯顎患者に対して, 治療期間が非常に短い即時荷重インプラント治療が盛んに行われてきた。そこで本研究はマッチングを使用した前向き臨床研究により即時荷重インプラントの治療効果を解明することを目的とした.
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