シクロオキシゲナーゼ(COX)は、プロスタグランジン(PG)合成系による律速酵素である。COXを標的分子とした薬剤に非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)があるが、NSAIDsの抗腫瘍効果により、COXおよびPGが腫瘍形成において重要な役割を果たしている可能性が示唆されており、COX-2は多くの悪性腫瘍において高発現が認められている。そこで、本研究課題では、口腔扁平上皮癌に対する、抗癌剤、放射線および抗癌剤と放射線の併用によるCOX-2の発現変化とCOX-2阻害剤によるアポトーシスの相乗効果、および、その際に生じるアポトーシス関連分子の動きを調べ、その機構を解析することを目的として実験を行っている。平成20年度は、次の2点の傾向が認められた。(1)ヒト口腔癌細胞株をシスプラチンおよびタキソテールでin vitroで刺激したところアポトーシスが誘導され、併せてCOX-2mRNAおよび蛋白の上昇が確認された。(2)COX-2選択的阻害剤であるNS-398と上記抗癌剤とを共刺激したところ、抗癌剤単独刺激時よりCOX-2の産生が抑制され、さらにアポトーシスの相乗効果を認めた。そこで、平成21年度では、さらに、放射線単独および抗癌剤と放射線の併用について検索したところ、次のように抗癌剤単独刺激と同様の傾向が得られた。(1)放射線単独および抗癌剤と放射線の併用により、COX-2mRNAおよび蛋白の上昇が確認された。(2)NS-398と共刺激したところ、COX-2の産生が抑制され、さらにアポトーシスの相乗効果を認めた。これらの結果は、COX-2阻害剤を抗癌剤および放射線と併用することにより、癌治療効果の向上に寄与する可能性があることを示している。
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