研究概要 |
21世紀の歯科医学における戦略的研究課題の一つは歯の再生と考えられる. 当教室では, 歯由来細胞株を用いた歯の再生医療の開発を目指した基礎的研究を行っており, 申請者は, マウス胎仔の歯胚からエナメル芽細胞および象牙芽細胞を分離・培養して, 不死化エナメル芽細胞株と不死化象牙芽細胞株の樹立に成功し, それらの特性を明らかにしてきた. 本研究では, エナメル芽細胞株と象牙芽細胞株を用いて上皮-間葉相互作用をin vitroで再現し, エナメルマトリックス蛋白を分泌するエナメル芽細胞への効率的な分化の至適条件を検討すること, エナメル質や部分的な歯の再生について評価することを目的としている. 基底膜成分と成長因子によるマウスエナメル芽細胞株の分化誘導条件の検討とマトリゲル内への細胞注入法による歯の形成能の検討を行っている. a. 基底膜成分の調整品であるマトリゲルをセルカルチャーインサート上でゲル化させた後, エナメル芽細胞をマトリゲル内に注入して3週間三次元培養を行い, 組織学的評価を行った. 三次元培養したエナメル芽細胞から部分的な歯やエナメル質を形成しないが, 細胞塊が形成された. b. マトリゲル内で細胞塊を形成したエナメル芽細胞との複合体をヌードマウス背部皮下に移植し, 免疫組織化学染色を行った. 移植6週のエナメル芽細胞は, エナメル芽細胞のマーカーであるアメロジェニンで染色歯上皮のマーカーであるサイトケラチン14で染色され, エナメル器様組織を形成した. さらに, 移植40週でレントゲン不透過性を示す石灰化組織が誘導された. 以上のことから今後, 不死化象牙芽細胞株と吸収性歯再生用Scaffoldを用いてエナメル質や部分的な歯の再生に関した研究を行う予定である.
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