現行の再生軟骨医療は、培養中に脱分化した軟骨細胞が生体内に移植されると自然に再分化する性質を利用して行われているが、その分子機構は未だ明らかにされていない。本研究の目的は、軟骨細胞の再分化誘導機構を解明する一助として、再生軟骨周囲の軟骨膜様線維組織において高発現しているペリオスチンに関して、軟骨細胞や再生軟骨に対する作用機構を解明することである。まず、マウス軟骨再生モデルにおける組織形成の経時的観察では、C57BL/6Jマウス耳介軟骨細胞とポリ乳酸(PLLA)足場素材を用いて作製した再生軟骨を同系マウス皮下へ移植し、経時的に摘出した再生組織を組織学的に観察した。その結果、移植後2週から8週にかけてトルイジンブルー染色でのメタクロマジーが増加し、再生軟骨組織の成熟が進むことが示された。また、ペリオスチンの発現を免疫組織化学的に検討したところ、移植後1週から再生軟骨周囲の軟骨膜様組織に発現していることが観察された。次いでペリオスチンの軟骨細胞に対する支持機能を評価した。ヒト耳介軟骨細胞の平面培養にペリオスチンを添加した場合には、細胞増殖に対する作用は認められなかった。同様に、ペリオスチンコート培養皿での培養時にも軟骨細胞の増殖効果は認められなかった。一方、アテロコラーゲン3次元包埋培養では、ペリオスチン添加により軟骨細胞におけるII型コラーゲンの発現上昇が認められ、ペリオスチンの軟骨細胞分化制御への関与が示唆された。さらに、線維芽細胞との共培養系における軟骨細胞の増殖・分化を検討するため、マウス皮膚由来線維芽細胞とヒト耳介軟骨細胞のco-culture系を確立した。その結果、軟骨細胞との共培養により、線維芽細胞におけるペリオスチンの発現が上昇することが示された。来年度は、ペリオスチンノックアウトマウスを用いて再生軟骨移植におけるペリオスチンの機能検討を行う予定である。
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