研究課題
若手研究(B)
顎骨浸潤を伴う口腔がんの臨床材料をもとにした網羅的遺伝子解析について、得られた遺伝子プロファイルより顎骨浸潤に関与する分子IL-6、PTHrPに着目して、その微小環境での機能解析をすすめたところ、癌細胞そのものは破骨細胞形成に重要なRANKLを誘導するIL-6よりもPTHrPを多く発現しており、このPTHrPが癌周囲の間質細胞に働きかけ、IL-6の発現誘導を通してRANKLを発現させ、顎骨浸潤に重要な働きをしていることが明らかとなった。その上で、口腔がん細胞株の頭蓋骨浸潤モデルマウスを作製し、骨浸潤先端部でのこれら分子の役割が確認された。また、口腔がんの臨床材料をもとにした網羅的遺伝子解析により抽出された口腔がんの病理組織学的分化度に関与する遺伝子FADDを同定し、染色体上の増幅および免疫染色法によるタンパクの高発現を確認し、ゲノムの増幅により引き起こされるタンパクの高発現が病理組織学的分化度、すなわち癌の性質に大きな影響を与え、その結果、リンパ節転移や予後に影響を与えることが明らかとなった。このことにより、リンパ節転移や予後を予測する分子マーカーの候補として有用である可能性が示唆された。しかし、FADDは細胞死を誘導する分子であり、これが癌で高発現している意義については不明なことが多く、また受容体結合分子であるところのFADDが核内で高発現している点も解析がすすんでいない。この点を解明するために、核移行シグナルに変異を加えた分子を高発現する細胞株を作製し、FADDの核内での機能解析をすすめている。
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Am J Pathol. 176
ページ: 968-980