ヒト「歯胚」より我々が樹立した組織幹細胞株は、これまでの研究において、とりわけ硬組織形成能を有する細胞(骨芽細胞、象牙芽細胞)に容易に分化誘導できる特徴を持つことが明らかとしてきた。また、硬組織のみならず、脂肪細胞への分化誘導も試み、その分化が確認された。さらに、ヒト歯胚由来組織幹細胞より骨芽細胞用培地にて分化誘導したヒト歯胚組織幹細胞において、アルカリフォスファターゼ活性が高度でありオステオカルシンの発現もそれに引き続いて引き起こされることを確認した。ヒト骨膜組織のプライマリーカルチャーより分化した骨芽細胞様細胞と比較して、ヒト歯胚組織幹細胞より誘導した骨芽細胞様細胞はアルカリフォスファターゼ活性が非常に高いことも確認された。また、このヒト歯胚組織幹細胞における血管内皮増殖因子の発現がもともと非常に高レベルに発現・分泌しており、骨芽細胞様細胞への分化誘導によって、血管内皮増殖因子の発現・分泌量が変化することを確認している。さらに、ヒト歯胚組織幹細胞から分化誘導した骨芽細胞様細胞におけるオステオカルシンの発現における細胞内情報伝達経路と、このヒト歯胚組織幹細胞から分化誘導した骨芽細胞様細胞における、血管内皮増殖因子の発現・誘導に関する、細胞内情報伝達経路の解析については、これまでのマウス骨芽細胞様細胞における情報伝達経路と同様に、MAPキナーゼの関与が示唆されており、BMP-4およびBMP-2の刺激によって、p38MAPキナーゼおよびp44/p42 MAPキナーゼのリン酸化を引き起こすことが示された。
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