研究概要 |
喉頭癌由来細胞HEp-2に5フルオロウラシル(5-FU)を理することで,NATH遺伝子発現が低下することに基づき本研究を行っていた.NATHは翻訳緑後のタンパク質に対し,そのN末端をアセチル化する酵素である.本研究の目的はプロテオーム解析によってNATHの標的分子を網羅的に解析し,癌細胞におけるNATHを中心とするアセチロームの重要性を明らかにすることである.またこれによって,5-FUによるNATH遺伝子発現抑制の意義を見出し,アセチロームを標的とした新たな5-FUの作用機序を解明することである.平成21年度の研究実績は以下の通りである. 1. H20年度に行ったプロテオーム解析の結果からNATH遺伝子が低発現している際はHSP70およびHSP90も低発現した事に着目し,ELISAを利用してGRP75(HSP70 family)及びHSP90αを定量した.しかしながら,ELISAにてそれらの蛋白発現の低下は認めなかった.サンプル数を重ね再検討の予定である. 2. NATH遺伝子をsiRNAにより低発現させるとthymidylate synthase(TS)mRNAが低発現するという結果から,他の細胞株(HSC-3, HSC-4, Ca9-22, HuH7, DLD-1, PANC-1)においてNATH遺伝子発現低下時のTS mRNAを定量したところ,全ての細胞株ではないが,TS mRNAが低下する傾向のある細胞株を認めた. 今後はsiRNAにてNATH遺伝子発現低下時のHSP70およびHSP90のmRNA発現量を定量し,プロテオーム解析の再現性を確認し,またその際の小胞体ストレスとの関連性を調べ,同時にアセチル化アッセイについての実験も進めていく予定である.
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