本研究課題では骨髄および歯髄中に存在する間葉系幹細胞の性状解明をおこない、骨髄幹細胞を歯牙構成細胞に分化誘導し、歯科再生医療へ応用する為の基礎的研究データを得ることを目的としている。 本年度研究ではGFP骨髄細胞移植ラットの歯髄組織中に存在するGFP陽性細胞の性状について詳細に解析を行った。また、歯髄組織から樹立した歯髄幹細胞についてその象牙芽細胞への分化能について検討を行った。 歯髄中の移植骨髄由来GFP陽性細胞の免疫組織学的検索では、神経系およびマクロファージ系の抗体には反応を示さず、明らかな象牙質形成細胞への分化も認められなかった。また、培養実験では増殖活性に乏しく、ある程度分化段階の進んだ細胞であると考えられた。以上の結果から同細胞は現在までに同定されていない細胞である可能性が示唆された。 歯髄組織から樹立した細胞の解析では、歯髄幹細胞は経代60代を経過しても高い増殖能を保持していた。また、同細胞を硬組織分化培地で誘導したところ、細胞外に多量の基質を産生した。電子顕微鏡による観察では産生された基質は線維状を呈しており規則正しい周期構造が認められたことから、基質の主体はコラーゲンであると考えられた。コラーゲン基質には針状結晶状の沈着が認められる箇所も存在しており、アリザリン染色に強陽性を示したところから、高度に石灰化していると考えられた。歯髄幹細胞をオスフェリオン・マトリゲルと共に免疫不全マウスに皮下に移植したところ、象牙質様の硬組織ならびに歯髄様の組織が認められた。免疫組織学的解析では硬組織を形成する細胞はGFP抗体陽性であり、移植した細胞が硬組織を形成したと考えらた。また硬組織および隣接する細胞に抗DSP抗体陽性を認めたことから、樹立した細胞は象牙芽幹細胞の性格を有すると考えられた。
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