研究概要 |
口腔カンジダ症は, Candida albicans(以下CA)を原因とする日和見感染症であり, 免疫不全や悪性腫瘍患者において, 重篤な転帰をとることが知られている。口腔常在菌であるC. Aは, 口腔粘膜に対して付着, 侵入する性質を有しているが, 宿主側の防御機構である口腔粘膜における白血球遊走能をもつケモカインを中心とした免疫応答に関しては明らかにされていない。本研究で我々は不死化口腔粘膜上皮細胞と歯肉線維芽細胞を用いて, CA感染による各種ケモカインの発現誘導を検討した。 方法 : 臨床分離CAIF 1385株をSabouraud培地にて37℃で24時間培養し, PBS洗浄後, 生菌懸濁液を調整した。また菌液を70℃1時間で加熱処理し, 死菌懸濁液を調整した。不死化口腔粘膜上皮細胞(RT7)と不死化歯肉線維芽細胞(GT1)に生菌懸濁液(最終濃度10^6cell/ml), あるいは各種濃度の死歯懸濁液を添加し, 経時的に全RNAを抽出, cDNAを作製し, 各種ケモカイン(CCL2, 5, 20, CXCL1, 5, 6, 8, 9, 10, 11, 12, CX3CL1)の定量的RT-PCRを施行した。 結果と考察 : RT7ではCA生菌の添加により12時間後のCCL2, 5, CXCL 1, 5, 6, 8の発現の増加が認められた。特に好中球遊走能をもつCXCL 1, 5, 6, 8が著明に増大した。これらは高濃度の死菌(10^8cell/ml)の添加においても若干の増加を示した。GT1では他のケモカインと比較して, CA生菌および高濃度の死菌の添加においても著明なCX3CL1の発現の増加が認められた。口腔粘膜上皮細胞, 歯肉線維芽細胞はCAの感染によって, それぞれ特異的なケモカインを発現しており, 口腔粘膜の感染防御機構に重要な役割を担っていることが示された。 本研究の成果は第17回日本口腔粘膜学会総会(2008年9月19, 20日, 東京)において発表した。
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