研究概要 |
新規口腔扁平上皮癌腫瘍マーカーとしてSideroflexin 3(SFXN3)抗体価測定の有用性を見出した。これまでの検討では、感度77.3%、特異度88.6%と非常に高い値を示しており、従来の腫瘍マーカーであるSCC抗原値を大きく上回る診断精度であった。また早期癌においても高い陽性率を示し、T1やT2の早期癌でも80%以上の検出感度であった。(PROTEGMICS. 2008, 2, 517-527) SFXN3抗体価測定は、ごく微量の血液サンプルで測定可能であることから、通常の血液検査に併せて行うことができ、患者にとって非侵襲的である。大規模な臨床応用に発展すれば、測定に関る費用がより安価となることが予想され、その臨床的意義は非常に大きいものと思われた。 フォローアップマーカーとしての検討は計20症例の口腔癌患者血清をサンプルとして行った。治療前後の検査時に血液を採取し、SFXN3抗体価の推移を検討した。外科的切除単独で行った7症例は、5症例で術後にSFXN3抗体価の低下を認めた。化学放射線療法を行った5例では、3例で治療後にSFXN3抗体価の低下を認めたほか、治療後再発を認めた2例では腫瘍の増大に伴い、抗体価の上昇を認めた。全体の評価としては、20例中12例で、病勢に一致してSFXN3抗体価が変動するという結果を得た。 免疫組織染色の検討では、SFXN3は腫瘍周囲の間質組織に強発現するほか、比較的分化度の低い癌細胞、血管内皮細胞、正常上皮の基底細胞層に発現することがわかった。このことから、SFXN3が癌細胞に存在するだけではなく、周囲の間質組織にも存在していることが明らかとなった。
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