研究概要 |
自己免疫疾患として口腔扁平苔癬(oral lichen planus : OLP)やシェーグレン症候群(Sjogren's syndrome : SS)における樹状細胞の役割を解析する一方で、口腔外科領域で扱う悪性腫瘍(扁平上皮癌、腺腫、肉腫等)に対する樹状細胞の関係についても興味深く検索をしていた。 近年、悪性腫瘍と樹状細胞とのかかわりに関しての知見としては、進行期悪性腫瘍(悪性黒色腫, 腎癌, 肺癌, 消化器系癌など)に対して樹状細胞を用いた免疫療法の臨床試験が進んでいる。 また、造血幹細胞や神経幹細胞などの組織幹細胞と同様のシステムによって癌が構成される癌幹細胞説という概念が注目されている。 癌幹細胞とは幹細胞が癌化したものであり、自己複製能、多分化能、造腫瘍能を有し、組織幹細胞と同様にニッチが存在するため強い抗癌剤耐性や放射線耐性を有しており、抗癌剤や放射線治療後の癌の再発の大きな原因となっていると考えられている。したがって、癌の根治的治療には癌幹細胞をターゲットとした治療の開発が必要となってくる。そこで期待されるのが樹状細胞を用いた免疫療法であるが、まずはターゲットである癌幹細胞のマーカーとなりうものを発見し、前癌病変を経て癌化する前に治療できないかと考えた。 そこで、前癌病変である白板症、また病理組織学的に扁平上皮癌のパラフィン切片を用いて複数の細胞増殖活性マーカーの検索を行ったところ、p63とp75NTRの発現に着目した。今後はその局在と分化型との相関、またin vitroでの両マーカーの発現と機能解析、さらに樹状細胞を用いた免疫療法につながるターゲットをしぼるための解析を進めていく予定である。
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