これまでに確立した上皮間葉分離器官培養法や細胞分離3次元培養による組織再構築モデルにおける増殖因子や細胞外基質の条件解析を行った。 まず、増殖因子としてFGF familyを用いた。実験には胎齢13.5日の胎仔マウスより分離した顎下腺上皮を用い、リコンビナントFGF2タンパクを結合したアクリルアミドビーズを置いたところ、ビーズに向かって発芽・分枝形成が確認できた。胎齢15.5日の胎仔マウスより分離した顎下腺上皮では、明らかな効果が確認出来なかったことから、FGF2は顎下腺の初期発生に関与していることが示唆された。TGF β familyとしてアクチビン、BMP2を用いた。アクチビンについてはFGF2と同様の結果であったが、BMP2では明らかな効果は確認出来なかった。 一方、細胞外基質としてはフィブロネクチン、コラーゲン、マトリゲル、インテグリンファミリーを用いた。特に、フィブロネクチンにおいては初期発生である分枝形成に不可欠であることが報告されているが、フィブロネクチンを添加することで分泌機能を有する分化マーカーであるアクアポリン5が誘導されること、フィブロネクチンとの結合に関与するα5インテグリンに対する中和抗体を添加することで組織内の空砲化が促進されることから、初期発生のみならず分化にも寄与していることが示唆された。また、コラーゲンやラミニンとの結合に関与するα1、α2、α3インテグリンに対する中和抗体を添加することで、腺腔構造が増加しアクアポリン5が誘導されることから、周囲の過剰なコラーゲンが組織の正常分化を阻害している可能性が示唆された。 また、分離顎下腺細胞あるいは切除組織の腎被膜下への移植による器官形成モデルでは、唾液腺周囲の間業組織には明らかな特性は確認出来なかったことから、ある一定の共通メカニズムが存在することか考えられた。
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