唾液腺再生医療を目指した唾液腺の発生、分化機構の解明を目的に、胎齢13.5~15.5日の胎仔マウスより顎下腺原にを摘出し、摘出した原基の器官培養を行うことで様々な実験を行ってきた。唾液腺の初期発生には、発芽、分枝形成、最終分化を経て成熟唾液腺となる。それぞれの発生ステージでは種々の因子の関与が報告されており、本研究では分枝形成を促進する因子の一つとして肝細胞増殖因子の関与を示した。また、顎下腺原基から得られたシングルセルをある一定の培養条件下で培養を行うと、単一細胞から組織再構築させることが出来ることを証明した。さらに、それらの再構築組織は、唾液腺最終分化マーカーとしてアクアポリンの発現も認めた。これらの現象は、唾液腺組織の中には幹細胞とも言うべき細胞群が含まれていることを示している。唾液腺幹細胞の存在はこれまでにも様々な意見が論じられているが、未だにその証明はなされていない。一方で、再生医療を目指す上では、組織幹細胞の同定やその分子機構の解明は必須の条件となる。 悪性腫瘍においては癌幹細胞の存在が同定され、様々な研究が行われているのが現状である。当教室では、唾液腺悪瀬腫瘍における癌幹細胞の同定、その分子機構についての解析を行っており、T-box転写因子であるBrachuryが唾液腺悪性腫瘍における幹細胞の分子機構に大きく関与していることを示している。 当該年度においては、唾液腺幹細胞の同定を目指して唾液腺組織におけるBrachuryの発現や動態について解析を行った。結果、Western blottihg、免疫染色、RT-PCR法などを用いて、正常唾液腺におけるBrachury発現は、胎齢13.5日目に急激な発現増加を認め、胎齢14.5日以降はその発現量は減少していることを証明した。
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