研究概要 |
癌細胞集団の中にあって細胞個々に特性が異なる背景には, その中に存在するごく少数の癌幹細胞が関与しているとされている。また癌幹細胞は他の腫瘍細胞と比較して, 自己複製能, 多分化能と腫瘍形成, 維持能が高く抗癌薬および放射線に抵抗性を有しているとされている。さらに抗癌薬や放射線治療によって腫瘍が消失しても, 治療後に再発あるいは転移を起こす原因は, 組織内に取り残された癌幹細胞と考えられている。本年度は, 口腔癌細胞において癌幹細胞を含むside population(SP)細胞分画を分離し, その性質を解析した。 ヒト舌癌細胞SCC25を蛍光色素Hoechst 33342で染色した後, ABCトランスポーター阻害剤を用いて細胞外排出能をFACSで解析およびソーティングし, SP細胞と非SP細胞に分離した。それぞれの細胞集団について, RNAを抽出し癌幹細胞マーカーとされるABCG2, Oct-4およびEpCAMのmRNA発現をRT-PCRで解析した。また, 5-FU感受性および増殖能をMTT法で評価し, さらにコロニー形成能を解析した。 SCC25のFACSによる解析により, SP細胞に特有の細胞集団が確認され, 割合は0.23%であった。癌幹細胞マーカーABCG2, Oct-4およびEpCAMの発現は, いずれも非SP細胞と比較してSP細胞で有意に高かった。IC50での5-FU感受性は非SP細胞と比較してSP細胞で明らかに抵抗性を示した。増殖能に関しては, 分離後48時間培養までSP細胞の方が有意に高かった。コロニー形成能は非SP細胞と比較してSP細胞で有意に高い値を示した。 ヒト舌癌細胞SCC25から癌幹細胞を含むSP細胞分画が分離可能であり, 癌幹細胞の特性を有していた。さらにこの細胞集団特有の分子を解析および標的することが, 効率的ながん治療に有用であると考えられた。
|