研究概要 |
我々は抗腫瘍応答からのエスケープ機構の一因と考えられている、抗アポトーシス分子であるProteinase inhibitor 9(PI9)が口腔癌に発現しているか否か、またその発現の程度が予後予測因子となりうるかについての解析を行ってきた。まず、口腔扁平上皮癌細胞株よりm-RNA、Proteinをそれぞれ抽出し、RT-PCR法、Western blot法を用いて、PI9の発現の有無を解析したところ、それぞれm-RNA, PtoreinレベルでのPI9の発現を確認することができた。次に当科において口腔癌の一次治療を行った患者の臨床情報(年齢、性別、原発部位、TNM分類、組織型、術前化学放射線療法の有無とその効果、5年生存率など)をデータベース化する作業を現在も引き続き継続している。このデータベースは膨大な情報量な上に患者の個人情報でもあり、院外持ち出しができないので、作業を行う場が限られ、思いの外難航している。また、患者サンプルを用いた予備実験を行い、口腔扁平上皮癌組織からそれぞれ抽出したm-RNA, ProteinからもPI9の発現が認められた。またこれも予備実験の段階ではあるが、口腔癌患者の組織標本を用いてPI9の免疫染色を行い解析した結果、癌部と非癌部でのPI9の発現の差が明確には認められなかった。今後の課題として、各癌患者におけるPI9の発現を可能な限り規模の大きな後ろ向きコホート解析を行う必要がある。そこから口腔癌患者のがん細胞におけるPI9の発現頻度を明らかにし、また、その結果明らかとなったPI9の発現量が患者の臨床情報とどのように相関があるのかを解析せねばならない。そこからPI9が予後不良因子であるのならば、術前の生検時にPI9の発現を確認し、その情報をもとに以後の治療法の選択の一助とすることで、患者に適切な治療を提供することが可能になるものと思われる。
|