研究概要 |
口腔扁平上皮癌細胞株HSC-2, HSC-4について通常培養条件(37℃, CO_2, 5% O_2, 20%),低酸素条件(37℃, CO_2, 5%, O_2 1%)で48時間培養、total RNAを抽出し、VEGF-A, C, D, MMP-2,9の発現をRT-PCR法にて比較した。HSC-2ではVEGFの発規に差を認めなかったがMMP-9の発現が低酸素条件で優位に上昇した。HSC-4では低酸素条件でVEGF-C,MMP-9の発現が優位に上昇した。癌のリンパ節転移には周囲組織への浸潤、リンパ管内への浸潤が必要であり、VEGF, MMPはその課程で重要な役割を果たす。癌組織ではその旺盛な増殖能のため栄養血管の新生が間に合わず、低酸素の領域が多くあり、癌細胞がその状態を脱却するため種の因子を産生、そのことが癌の悪性化に関連しているのではないかと考えられている。今回の我々の結果からHSC-4ではリンパ管新生を促すVEGF-Cの発現が増加、また両細胞株で基底膜を破壊するMMP-9の発現が増加したことから低酸素状態による癌の悪性化のメカニズムの一端を示唆する結果が得られたと考える。今後はさらに関連因子の検索を行い、癌の浸潤、転移機構を明らかにしていきたいと考えている。
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