癌細胞には数十ナノサイズの粒子を特異的に細胞内に取り込むサイズターゲティング機能があることが解明されつつあり、数十ナノサイズのフラーレン類が癌細胞中に特異的に取り込まれる事が確認されている。さらに、フラーレン類はDNAと結合し、ベクターとしての高い能力を持つ事も報告されており、癌の遺伝子治療への応用の可能性も持っている。その他にも、フラーレン誘導体は可視光線照射により活性酸素を生成することが確認されており、癌の光線力学治療への適応も期待されている。 今年度の目標として口腔癌細胞の株化および、フラーレンの細胞毒性の検討および、癌細胞への導入の検討を行った。 現在の成果として、口腔癌細胞の株化は継代中であり、今後安定して株化するか培養中である。 フラーレンの細胞毒性についての検討については、ヒト口腔粘膜を採取し、口腔粘膜由来正常上皮細胞OEを用いて検討を行っているが、現在の所OEが安定せず確実な結果は得られていないが、今後n数を増やしてデータを確立することとしている。 口腔癌細胞へのナノフラーレンの導入条件の検討をヒト口腔癌細胞株HSC3、HSC4を用いて行っている。培養メディウムに混和するだけでは取り込み効率が悪いため、より良い取り込み効率を得るため、現在、超音波導入装置(ソニトロン2000)を用いて導入効率の良い条件を検索中である。 口腔癌細胞へのナノフラーレンの導入が安定した時点で導入細胞の形態、増殖等の細胞性質の変化が認められるかの検討を行う予定としている。
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