腫瘍細胞の増殖と血管系構築の不均衡によって、固形腫瘍内部には十分な酸素が供給されない低酸素細胞が存在する。低酸素細胞は、放射線療法や化学療法に対し抵抗性を示し治療成績の低下や再発の原因となっている。そのため、低酸素細胞を標的とした癌治療は治療効果の向上、さらには、口腔癌の予後の向上に寄与すると考える。本研究では、口腔扁平上皮癌細胞の低酸素環境下における5-FUに対する耐性獲得機序の解析を行う。また、5-FUに対する治療効果予測の有効な診断マーカーの検索の為、遺伝子発現プロファイルの網羅的な解析を行う。さらに、低酸素環境下における5-FU抵抗性の解除による治療効果の向上を目的とする。今回、我々はWestern blot法、Real time PCR、フローサイトメトリー等の手法を用いた実験を行うことによって(1)低酸素環境における5-FUに対する耐性獲得機序の解析を行い、Affymetrix社のGeneChip Expression Analysis Systemを用いて(2)低酸素環境における応答性の相違に関与する遺伝子の特定し、特定されは遺伝子をsi RNAによってノックダウンし、機能解析を行い、(3)5-FUの治療効果を予測する臨床マーカーの確率、および(4)5-FU耐性機構に対する分子標的治療の確率することを目的としている。すなわち口腔扁平上皮癌の低酸素環境における5-FUに対する耐性の獲得機序の解析、低酸素環境における応答性の相違に関与する遺伝子を特定し、特定された遺伝子を口腔扁平上皮癌に遺伝子導入することにより、もたらされる耐性の解除を試みる。また、本研究の成果は、臨床において5-FUの治療効果を予測する診断マーカーの確率にも役立つと考えている。
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