研究概要 |
舌癌切除によって引き起こす摂食、嚥下機能の低下は、組織の実質欠損だけでなく、舌癌周囲の正常な筋の機能低下が影響している可能性が指摘されている。しかしながら、舌癌発症後の病巣周囲の正常な舌筋の筋線維特性の変化を詳細に検討した報告はみられない。そこで舌癌病巣周囲の舌筋について、それらを構成するミオシン重鎖(MyHC)の各アイソフォームの量的変化について検索を行い舌癌が与える影響について検索を行った。 平成21年度は平成20年度と同じく、マウス口腔底扁平上皮癌由来の樹立細胞(SCC7細胞)を培養後、BALB系ヌードマウスの舌中央部に注入し、舌癌を発症させた。SCC7細胞注入1ヶ月後に、舌癌が発症しているのを確認後試料採取した。H-E像では、舌深部にN/C比が高く低分化な腫瘍細胞が発症しているのを確認した。腫瘍細胞と上皮との間に残された内舌筋の筋線維特性について検索を行うため、筋収縮タンパクで速筋型に属するMyHC-2a、-2b、-2dや遅筋型に属するMyHC-1について免疫組織化学的検索を行った。平成20年度では、コントロールはMyHC-2bによって構成されていたのに対し、舌癌発症群では、MyHC-2aで構成されていたことを確認しており、平成21年度ではさらにMyHC-2d,-1についても検索を行った。その結果、MyHC-2dやMyHC-1は舌癌発症群で発現していることが分かった。さらにバイオマーカーとして用いられるHMGB1についても発現の違いを検索した。 その結果、舌癌発症群の舌癌部で発現が認められた。現在は平成21年度に引き続きレーザーマイクロダイゼション法を用いて詳細に検索を行っているところであり、平成22年度中に結果を出す予定である。
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