研究概要 |
腺様嚢胞癌は悪性唾液腺腫瘍であり口腔領域の悪性腫瘍としては扁平上皮癌に次いで発生頻度が高い疾患である. 口腔領域では比較的遭遇することが多く、また特徴的な病態を示す疾患である腺様嚢胞癌であるが、いまだに不明な点が多く、その理由として実験モデルが確立されていないことが挙げられる. われわれは新たに腺様嚢胞癌培養細胞株ACCNSを樹立し、3次元培養において腺様嚢胞癌の病理組織型におけるsolid typeとcribriform tvpeと類似した組織像を示し、腺様嚢胞癌の有用な実験モデルを確立した. 本実験モデルにおいて、ACCNSはMWPs阻害剤を添加するとコロニー形成は著しく阻害され、腺様嚢胞癌の浸潤機構にMMPsが深く関与していることが示唆された. 本細胞株以外にもこれまでにACCS、SCCMなどの腺様嚢胞癌細胞株が知られそおり、これらの細胞株についても3次元培養を行ったとこち、ACCNSと同様にコロニー形成を認め、ACCSはtubular typeをACCMはsolid typeを示した. また、ACCNSと同様にMMPs阻害剤の添加によりコロニー形成は抑制された. このことから、以後の研究には上記3種類の細胞株を用いることとした. これまでの研究で培養細胞、特に癌細胞は2次元培養と3次元培養ではその性質が異なり、3次元培養において、よりその癌細胞の性質が反映されるとされている. そこで、2次元培養を行ったACCNSと3次元培養を行ったACCNSからRNAを回収し、種々のMMPsについてそのRNA発現を検討した. 腺様嚢胞癌培養細胞は2次元培養、3次元培養のいずれにおいてもMMP7, MMP9, MMP14, MMP15の発現を認めた. MMP2は3次元培養では発現を認めず、この培養条件による変化から扁平上皮癌とは異なり、MMP2は腺様嚢胞癌の浸潤機構に関与していない可能性が示唆された. 今後、他のMMPsや増殖因子についての解析を行っていく予定である.
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