研究概要 |
ダウン症候群由来の歯肉線維芽細胞に歯周病原細菌Porphylomonas ginaivalisを感染さ、せたところ, 健常者由来の細胞に比べ, 細胞あたりの付着・侵入細菌数の増加および, 細胞移動性の低下がみとめられた。このことから, ダウン症候群由来細胞は, P.gingivalisに容易に感染しやすく, また感染により創傷治癒に遅延をきたすことが示された. また, ダウン症候群由来細胞は, 感染によりパキシリンの発現が有意に低下し, α5β1インテグリンのタンパク質分解が誘発されたが, そのmRNA表現は影響を受けなかった。以上のことから, P.gingivalisはダウン症候群由来の細胞にすみやかに侵入して, その後パキシリンの発現量を下げることで, 細胞運動性を弱め, 創傷治癒と歯周組織の再生を抑制していると考えられ, このことが, ダウン症候群に発症する歯周炎に関係していることが示唆された. また本年度は, ダウン症候群由来の歯肉上皮細胞に対してSV40largeT抗原を用い, 10代程度の培養が可能な株を作製した, これまで, 健常者由来のものに比べて培養が困難であり, 3代以上の継代ができなかったことから, 歯周炎研究において用いられることはほとんどなかった. 今回, 作製株を用いてP. gingivalis感染実験が可能となり, 炎症性サイトカイン産生も確認された. 今後のダウン症候群の歯周炎研究において, 重要なツールになると考えられる.
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