研究概要 |
以前にダウン症候群(DS)由来歯肉上皮細胞において,P.gingivalis感染時にTLR2と炎症性サイトカイン発現が増加することを報告した.今年度はDS由来歯肉上皮細胞を用いて,大腸菌およびP.gingivalis由来のLPSで刺激した場合の,TLRを介したIL-6およびIL-8発現について解析を行なった,1)大腸菌由来LPSに対する反応:LPS刺激6時間で.IL-6およびIL-8mRNAとも発現の有意な増加を認めたが,12および24時間では無刺激時よりも,発現量が有意に減少した.抗TLR4抗体を作用させたところ,LPS刺激6時間で,IL-6およびIL-8 mRNAとも発現の有意に減少したが,12および24時間では無刺激時と有意な差をみとめなかった.2)P.gignivalis由来LPSに対する反応:LPS刺激6および12時間で、IL-6およびIL-8mRNAとも発現の有意な増加を認めたが,24時間では無刺激時と有意な差をみとめなかった.抗TLR2抗体を作用させたところ,LPS刺激6,12および24時間で,IL-6およびIL-8mRNAとも発現が有意に減少した.これにより,歯肉上皮細胞における炎症反応の生じやすさが,DSの歯周炎進行に関与すると考えられた.DS由来歯肉上皮細胞では,大腸菌由来LPSよりもP.gingivalis由来のLPSで,より長いサイトカイン発現が観察された.つまり,DS由来歯肉上皮細胞では,大腸菌由来LPSよりもP.gingivalisLPS由来LPSへの反応が強く起こっている可能性が示唆された。抗体によるTLR2やTLR4のブロックで,IL-6とIL-8発現の抑制をみとめたことから,DSにおいてTLRを介した免疫反応が,歯周炎を仲介していると考えられた.以上より,ダウン症候群の歯周炎進行の宿主因子の一端が明らかになったと考える.
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