|
顎関節症との関連が指摘されている、咬合の変化に伴う歯の移動と歯周病に関する実験を行った。
これまでの研究において、対合歯の存在しない歯の挺出と歯周病との関連が指摘されている。今回の研究の目的は、成長終了ラットにおいて実験的に歯周病を誘発し、対合歯のない歯の挺出様相を比較検討することである。また、併せて歯の移動に伴う歯槽骨レベルの変化も検討することとした。
実験では、26週齢雄性ラットにおいて、咬合の変化および歯周病を実験的に惹起するために、実験群のラットにおいては、上顎右側臼歯歯冠を歯科用バーにて削除および歯冠歯頚部周囲に絹糸を巻いた。そして、次の4群に分けた。対合歯削除群(HU)、対照群(HO)、対合歯削除歯周病群(PU)、歯周病群(PO)。なお今回の研究は、広島大学動物実験委員会審査会による審査、承認を受けている。実験開始から4週間後、マイクロCTにて頭部をスキャンし、3次元画像を構築後、第一臼歯の規定された部位にて歯の挺出量および頬舌側歯槽骨レベルをそれぞれ計測した。
対合歯を失った群の臼歯は、対照である反対側の歯と比較して、より挺出していた。さらに、歯周病群ラットでは、より大きな挺出が認められた。また、非歯周病群では、歯の挺出に伴い、歯槽骨の増加が舌側および頬側の両方で認められたが、歯周病群では歯槽骨は逆に低下した。
今回の結果から、対合歯のない歯の挺出が認められたが、前周病に罹患することにより挺出量はさらに大きくなり、またそれに伴う歯槽骨の増減も歯周病に罹患しているか否かによって大きく影響されることが示唆された。
|
