研究概要 |
硬口蓋を形成する骨と軟口蓋を形成する骨格筋の胎生期における発生過程について、H-E染色にて組織学的観察を行った。軟口蓋発生の中心を担う骨格筋は、口蓋帆張筋と口蓋帆挙筋に大別されるが、口蓋帆張筋は、胎生14.5日齢時に翼状突起が形成中の軟骨組織下方に凝集した細胞集団として観察され、正中方向へと増殖していくことがわかった。左右の口蓋帆張筋の正中部での癒合は線維性であり、骨格筋細胞は観察されなかった。口蓋帆挙筋もまた同様に、左右の翼状突起の下方、さらに後方部に細胞凝集塊として観察されるが、正中部においても骨格筋成分の豊富な組織であった。これらの組織学的な観察から、口蓋発生中に口蓋裂発症を決定づける重要な時期は、硬口蓋では、胎生13.5日齢から14.5日齢、軟口蓋では胎生14.5日齢以降であることが分かった。また、Jacson LaboratoryよりWntl-cre ; R.26Rマウス、Myf5-cre ; R26Rマウスを購入し、口蓋発生期における神経堤由来細胞、中胚葉由来細胞分布をX-gal染色を用いて確認した。さらに、口蓋発生において重要であると考えられる細胞分化マーカーのmRNA発現を明らかにするため、in situ hybridizationを用いて解析をすすめた。分化マーカーとして主に用いた遺伝子は、Ctgf, MyoD,Type I collagen, Sox9, Scleraxisである。CtgfmRNAの口蓋における発現パターンは大変興味深く、蛋白レベルでの発現パターンとあわせて、第46回小児歯科学会大会にて発表した。さらにhlsitu hybridizationによって検討した遺伝子群とTGP-βシグナルの関連を調べることを日的として、口蓋の器官培養を試みた。現在は、器官培養法の確立をめざし、様々な培養条件を模索している段階である。
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