研究概要 |
20年度に行った研究から、軟口蓋組織発生で主たる構造物となるものは、口蓋腱膜であることがわかった。口蓋腱膜は、口蓋の癒合が開始する胎生14.5日齢より、口蓋間葉細胞が凝集した帯状の組織として観察され、徐々に細胞外基質をともなった腱膜組織となる。この発生過程において、Type I collagen, MyoD, Scleraxisの遺伝子発現をin situ hybridizationを用いて調べた。結果、口蓋腱膜は、その発生過程でType I collagen遺伝子を強く発現する細胞によって形成されることがわかり、またType I collagen蛋白を豊富に含む組織であることを免疫組織化学染色によっても確認した。さらに機能的解析を行うため、口蓋の器官培養を試み、培養条件を確立した。胎生13.5日齢、14.5日齢の口蓋を採取し、TGFb2蛋白を吸収させたビーズを口蓋間葉に挿入した。Tgfb2蛋白ビーズ周囲には、間葉細胞の凝集が確認された。さらにBrdUを培養液に添加し2時間後に組織切片を作成したところ、BSAコントロールビーズ周囲に比較してBrdU陽性細胞を多く認めた。従って、TGFb2蛋白は、口蓋の間葉細胞の増殖を促進し、細胞凝集を促す機能を持つことが示唆された。さらに、TGFb2蛋白ビーズ周囲には、Type I collagen蛋白の発現が増強されていることがわかり、TGFb2蛋白は、Type I collagen蛋白分泌にも影響を与えていることが明らかとなった。これらの成果は、第115回日本解剖学会総会にて報告した。
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