われわれは歯胚形成メカニズムを明らかにする目的で歯の遺伝子ライブラリーの作成を行い、歯の発生に関わる遺伝子の包括的な解析を行っている。これまで歯の発生に重要な機能を持っている考えられる約100個の遺伝子を選定し、それらの発現を確認するためにRT-PCR法を用いて、他の組織と比較し、歯に発現の高い遺伝子のスクリーニングを行った。その中で3つの新奇遺伝子(これらに暫間的にTM14、TI-3、TI-4と名付けた)について着目した。 TM14は、fibulinと相同性のある新奇のFibulin familyに属する細胞外マトリックス蛋白で、Fibulin 7と命名した。組織間においては歯に発現が強くみられ、とくに象牙芽細胞に発現しており、細胞接着に関わっていることを明らかにした。 TI-3は、硬組織(歯、軟骨、骨)に発現が強い新奇の細胞-細胞間結合蛋白質である。その発現をin situhybridization法にて解析を行ったところ、歯においては、象牙芽細胞、とくに前象牙芽細胞に限局した特異的な発現を示した。また、長管骨成長板においては、前肥大軟骨細胞に特異的にその発現が認められた。それぞれの歯、軟骨の分化モデルである象牙芽細胞(mDP6)、軟骨様細胞(ATDC5)の各細胞株を用いて、それぞれ分化させるとTI-3が誘導されることが明らかとなった。 これまでに硬組織に特異的な細胞-細胞間蛋白質の報告はなく、この遺伝子の解析は歯の発生にとどまらず硬組織形成メカニズムを明らかにするうえで重要な遺伝子になると考えている。
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