研究概要 |
本年度は神経ペプチドとともに、矯正力による歯の移動に関連のある低酸素状態の歯根膜への影響を調べた。矯正力を歯に加えると、圧迫側の歯根膜は低酸素状態になることが知られている。また、歯根膜細胞は、高いalkaline phosphatase(ALP)活性など、osteogenio activityをもつことが明らかとなっているが、圧迫力による低酸素状態が歯根膜細胞の,osteogenio activityにどのよう影響を与えている明らかではない。今回、ヒト歯根膜細胞を用い、低酸素状態と、低酸素状態でさらに圧迫力を加えたときのALP活性、Runx2発現について検討した。 ヒト歯根膜細胞を、10%FBS含有α-MEMもしくはα-MEMに5091mLアスコルビン酸、100μMβ・グルセロリン酸、10・8Mデキサメタゾンを加えた培養液で4日間培養した。低酸素濃度は5%と1%に設定し、培養液量を増加させることにより5.0g/cm2もしくは8.0g/cm2の圧迫力を加えた。低酸素環境であるかどうか、hypoxia-indudble 1 alpha(HIF1-α)の免疫染色により調べた。上記条件で培養後、ALP活性を測定し、Runx2ならびにHIF1-αの遺伝子発現を半定量的にRT-PCRにて調べた。 低酸素でヒト歯根膜細胞を培養後、低酸素を示す核内のHIF1-α陽性反応が認められた。ALP活性は低酸素と圧迫力と相乗的に減少が認められた守低酸素状態では、Runx2発現はコントロールよりも低く、5%O_2より1%O_2の方で、発現が低かった。5%O_2下では、Runx_2発現は、圧迫力の大きさに伴い減少したが、1%O_2下では圧迫力によるRunx2の変化は認められなかった。これらの所見よ駅低酸素環境はヒト歯根膜細胞のosteogenic activiyを減少させ、さらに圧迫力を加えると、低酸素と相乗的にosteogenic acivityを減少させることが明らかとなった。したがって、歯に矯正力を加えたときの圧迫側では、歯根膜細胞が低酸素環境によりosteogenic activityを失い、低酸素という条件も歯根膜細胞による骨代謝に関連していることが示唆された。
|