研究概要 |
矯正的歯の移動は、破骨細胞による骨吸収と、骨芽細胞による骨形成による骨リモデリングにより生じ、歯根膜がその骨代謝を調節するキーファクターであることがこれまでに分かっている。本研究では、骨形成因子であるosteoactivin (OA)について着目した。OAは、2001年に大理石病のモデルラットより、その原因遺伝子として分離同定された分子で、当初は骨芽細胞の骨形成を促進する分子であると考えられていたが、様々な働きがあることが分かってきており、骨芽細胞の分化および骨形成促進、破骨細胞の形成促進、ガン細胞の転移抑制、線維芽細胞の増殖抑制などが報告されている。今回我々は、歯周組織の骨代謝におけるOAの働きについて解明するため、in vivoとin vitroでメカニカルストレス下の歯周組織におけるOAの発現について調べた。 矯正的歯の移動を生じたラット歯周組織において、OA免疫陽性破骨細胞が圧迫側で認められ、また一方で、多くのOA免疫陽性骨芽細胞が伸展側で観察された。また、PCR法とreal-time PCR法でOAmRNAがヒト歯根膜線維芽細胞に発現しており、メカニカルストレス(圧迫力・伸展力群)によりOA発現が減少することを認めた。さらに、ヒト歯根膜線維芽細胞におけるOAの細胞内・外ドメインの両者の局在について免疫蛍光染色で調べたところ、OA細胞内ドメイン免疫陽性反応は、コントロール群に比較し圧迫力群で増加、伸展力群で減少し、一方OA細胞外ドメイン免疫陽性反応は、圧迫力群ではコントロール群と同様、伸展力群では減少した。このように、遺伝子レベルと免疫染色の結果の相違より、OAがシェディングを受け、オートクライン調節を介して作用している可能性が示された。さらにOA活性化のメカニズムの解析が進めば、歯周組織の骨リモデリングの解明の一助となる。この研究成果をH21年9月22-24日に中国武漢で行われたJADR 57th annual Meeting, 2nd Meeting of IADR Pan Asian Pacific Federation (PAPF) and the 1st Meeting of IADR Asia/Pacific Region (APR)で発表し、Young Investigator Award of JADRを受賞した。
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