研究概要 |
歯科臨床における根未完成歯のう蝕や中心結節の破切による歯髄病変は,治療が困難で予後も悪い。ヒト臨床では歯根成長が停止することによって摂食や歯の矯正治療に制約が出ることが課題となっている。そこで,ラット歯根の観察により、根未完成歯の薬剤作用による歯根根尖閉鎖による治癒機転の解明する。 対象はWistar系ラット(56匹)を用い、正常群と4週齢で歯髄の開放を行った(歯髄感染群)後,歯根完成の11週齢までの間の5,7,9,11週齢4群をμCTと組織切片にて観察した。 その結果、正常群では、Micro CTにより生後4週から10週ラットにおいて歯根形成が段階的に亢進し、10週でほぼ歯根形成が完了することが定量化された。歯髄感染群は生後4週目に露髄処置を行ったのち、1、3,5,7週後の歯根をH-E染色像で観察すると、6週で根先端象牙質とセメント質増加がみられた。しかし、CT定量化の結果は、正常群と比較し、歯根形成量が優位に低下していることが明らかとなった。 以上の結果から、歯根形成過程の解析に従来の組織学的解析とMicro CTを併用することにより経時的な歯根形成動態の解析に有効であることが示されたことから、硬組織全般での形成、破壊、修復過程の解析への応用が期待される。
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