歯科矯正治療に用いられているマルチブラケッド装置のブラゲラトおよび接着材に関して、その治療終了時の撤去を歯質障害がなくかつより容易に行うため、加熱すると体積が70倍膨張して接着強さを減少させるマイクロカプセルを混入した試作矯正装置用接着材を開発し、そのマイクロカプセル(平均粒径10〜30μm)含有量と接着強さについてより効果的な接着材層の厚さについて検討を行った。試作接着材(マイクロカプセル含有量30〜40%)を用いて、接着材層の厚さを50〜200μmになるよう調整してセラミックブラケットを接着硬化させ、その後加熱しその接着強さについて以下の結果が得られた。 接着強さは、接着材層の厚さの増加に依存して(含有量30%(加熱前13.8MPaから6.5MPaに、加熱後6.1MPaから2.5MPaに)、含有量40%(加熱前12.7MPaから5.6MPaに、加熱後4.8MPaか照2.6MPaに))減少した。 加熱前の接着強さに対する加熱による接着強さの減少する割合(減少効果)については、含有量30%では、接着材層を任意に設けない場合56%であったのが、50μmで39%、100μmで61%、200μmで61%であり、含有量40%の接着材では、層を設けなかった場合62%であったのが、50μmで42%、100μmで76%、200μmで54%であった。 また、セラミック製ブラケットの上部構造が同様で、基底面の凹凸形態、シラン処理の有無について、上記同様に30%、40%の含有量の接着材で接着材層を設けず接着強さを計測したところ30%は10.6MPaか照3.5MPa(減少率67%)に40%は7.1MPaから3.1MPa(減少率56%)に減少した。 マイクロカプセル含有接着材は接着強さを維持し、加熱による効果的な接着強さの減少を得るためには100μmの厚さが有効であるが、ブラケット基底面形態、処理の影響で接着力とその層の厚さとの関係が複雑化してしまうことが示唆された。
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