本研究の目的は2年間でCPP-ACP存在下で得られた象牙質再石灰化層構造を多角的に評価し、CPP-ACPが有効に働く最適条件、pHとイオン濃度に関する至適条件を明らかにすることである。また、CPP-ACPが再石灰化する象牙質内外のイオン動態に与える影響を分析することで、どのような対応を行って効果的な齲蝕予防(抑制)が達成されるかを検討し、日常歯科臨床で多用されている光重合型グラスアイオノマーセメントにCPP-ACPを配合することで、脱灰象牙質を除去することなく有効的に歯を保存する方法を新たに確立することを目指している。 平成20年度においてはウシ象牙質におけるCPP-ACPを応用した環境下で脱灰から再石灰化に至る過程の構造変化をマイクロCTによる画像解析を用いて同一試料上で観察した。これまでの薄切切片上での観察と比べ、マイクロCTを使用することで脱灰〜再石灰化の経過を全く同じ場所で観察することが可能であり、切片作成上の試料の破壊もほとんどなかった。ただし、エナメル質における脱灰・再石灰化の観察と比較して、有機質の含有量が多い脱灰象牙質における再石灰化初期のわずかな再石灰化層の検出は困難であったため、撮影条件や基準の設定には今後更なる検討を要する。しかしながら、本研究でのウシ象牙質における脱灰病巣のマイクロCTによる観察条件が確立されれば、ヒト乳歯を非破壊的に観察することが可能であり、現在、提供される数が激減しているヒト乳歯抜去/脱落歯を協力者から一定期間貸出を受け、CPP-ACPならびにフッ化物の非破壊的な効果を測定した後、返却することが可能であり、より臨床に即した研究を推進することができると考えている。
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