本研究の目的はCPP-ACP存在下で得られた象牙質再石灰化層構造を多角的に評価し、CPP-ACPが有効に働く最適条件明らかにすることである。また、CPP-ACPが再石灰化する象牙質内外のイオン動態に与える影響を分析することで、どのような対応を行って効果的な齲蝕予防(抑制)が達成されるかを検討し、日常歯科臨床で多用されている光重合型グラスアイオノマーセメントにCPP-ACPを配合することで、脱灰象牙質を除去することなく有効的に歯を保存する方法を新たに確立することを目指している。 平成21年度においては昨年度に引き続いて、ウシ象牙質においてCPP-ACPを応用した環境下での脱灰から再石灰化に至る過程の構造変化をマイクロCTによる画像解析を用いて同一試料上で観察した。エナメル質と比較して、脱灰象牙質における再石灰化初期のわずかな再石灰化層の検出は困難であったが、試料の破壊はほとんどなかったことから、より臨床に即した研究を推進するためにヒト乳歯抜去/脱落歯でのCPP-ACP効果をマイクロCTで測定する準備を進めた。現在、ヒト乳歯は提供される数が激減しているため、協力者から一定期間貸出を受け、CPP-ACPならびにフッ化物の効果を非破壊的に測定した後に提供者へ返却するというシステムを立ち上げることは、今後の臨床研究を円滑に遂行する上で必要だと思われるからである。そのためマイクロCTに併せ、非破壊的な脱灰/再石灰化歯質評価が可能であるQLF(光励起蛍光定量法)を用いた。これによりヒト乳歯エナメル質および露出象牙質に対する再石灰化効果をより簡便に測定する可能性が見出されたが、定期的なフッ化物塗布による再石灰化の影響が著明な抜去ヒト乳歯は、現在の測定機器での再石灰化効果測定用試料として最適ではないことが明らかになり、より微細な再石灰化構造を観察するためのさらなる検討が必要である。
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