研究概要 |
Smad 2による歯肉上皮細胞の増殖・遊走の抑制 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病態制御科学専攻病態機構学講座歯周病態学分野下江正幸, 塩見信行, 冨川和哉, 峯柴淳二, 山口知子, 前田博史, 高柴正悟 【目的】歯周組織の再生療法において上皮の増殖を制御することは, 歯周組織再生療法をより精度の高いものにするために非常に重要な課題である。近年Itoらは, TGF-βシグナルの細胞内メディエーターであるSmad 2を大量に発現する遺伝子改変(TG)マウスを作製することに成功した。この場合のSmad 2発現はkeratin 14 promoterによって制御され, 皮膚では創傷治癒が遅延することが報告された。これらの背景から, 歯周組織においてSmad 2の発現を制御することは, 歯肉上皮細胞の増殖を制御することに繋がると考えた。そこで, このTGマウスから採取した歯肉上皮細胞の増殖能と遊走能を, 野生型(WT)マウスのものと比較した。 【材料および方法】歯肉上皮細胞は, TGマウスと野生型(WT)マウスの口蓋歯肉から採取して, 培養した。これらの細胞を用いてSmad 2の発現, 増殖能, および遊走能の違いについて検討した。Smad 2の発現は, 免疫蛍光染色によって光学顕微鏡下で確認した。増殖能は, MTS法およびBrdU法によって比較検討した。遊走能は, スクラッチ法によって比較検討した。統計処理には, Student's t-testを用いた。 【結果および考察】歯肉上皮細胞におけるSmad 2の発現は, TGマウスにおいてWTマウスのものより増強していた。TGマウスの歯肉上皮細胞の増殖能および遊走能は, WTマウスと比較して有意に低下していた。これらの結果は, Smad 2が歯肉上皮細胞の増殖および遊走を抑制していることを示唆する。将来的には, Smad 2の発現を制御することによって上皮の深行増殖を抑制すると, 歯周組織再生療法の精度を向上できるものと考える。
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