歯周治療はプラークや歯石などの機械的除去が主体であり、薬物療法は対症療法に限られる場合が多い。現在、歯周組織の細胞に直接作用させ歯周疾患の進行を抑制するような薬物療法は存在しない。そこで破骨細胞の分化・活性を制御しているRANKLのデコイ受容体であるオステオプロテジェリン(OPG)に注目し、歯周治療における新たな薬物療法の開発を目的とし、実験的歯周炎モデルラットを用いてOPGの歯槽骨吸収抑制効果について検討を行った。ラット上顎右側第二臼歯をナイロン糸で結紮して実験的歯周炎を惹起させ、非結紮群(非結紮・生理食塩水)、対照群(結紮・生理食塩水)、OPG群(結紮・OPG)の3群に分け、1日おきに口蓋側歯肉に各種溶液を局所投与した。投与開始から5日目および14日目に上顎骨を採取し、マイクロCTを用いて上顎骨の3次元画像を構築し、口蓋側の歯槽骨高径を計測した。次に脱灰薄切切片を作製してTRAP染色を行い、口蓋側歯槽骨に認められた破骨細胞数を計測した。また、炎症性サイトカインIL-1βの免疫染色を行い光学顕微鏡で観察した。次に、HE染色を行い接合上皮直下結合組織内の単位面積あたりに存在する多型核白血球数を計測した。マイクロCT解析の結果、非結紮群に比較して結紮を行った対照群およびOPG群では有意な歯槽骨吸収が認められた。そしてOPG群では対照群と比較して有意に歯槽骨吸収が抑制された。破骨細胞数の計測結果では、結紮により有意に増加した破骨細胞の数はOPG投与により有意に抑制された。IL-1βの免疫染色の結果、非結紮群に比較して対照群およびOPG群で強い染色像が観察された。また、対照群とOPG群で同様の染色像が観察された。多形核白血球の数は非結紮群に比較して対照群およびOPG群で有意に増加したが、対照群とOPG群の間で有意差は認められなかった。以上の結果から、OPGはラット実験的歯周炎において歯槽骨吸収を有意に抑制するが、炎症には影響を及ぼさないことが明らかとなった。
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