骨芽細胞の分化を調節するWntシグナルという重要なシグナル伝達経路をターゲットにした歯槽骨再生薬の開発に関する研究を行った。骨芽細胞に多く発現するDkk1というタンパク質に着目した。 平成21年度は、抗Dkk1抗体の局所投与を行い、骨再生に関してその影響を検討することであった。 抗Dkk1抗体の影響を検討するため、ラット脛骨に人工的に骨欠損を作成し、抗Dkk1抗体の局所投与を行った。経時的な骨量の変化を軟X線にて確認した。当初、歯槽骨に骨欠損を作成する予定であったが、X線装置、撮影の状況により、ラット脛骨に投与した。その結果、コントロール群と比較して、抗Dkk1抗体添加群では、早期に骨量の増加が認められた。 また、追加として、in vitroにおいて、抗Dkk1抗体のWntシグナル伝達経路への影響を詳細に検討するため、Wntシグナル伝達経路の転写因子であるTCFレポーターベクター(TOPflash)を、マウス骨芽細胞様細胞MC3T3-E1に導入し、ルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、抗Dkk1抗体を添加した細胞では、レポーター活性がコントロールと比較して、有意に増加した。 さらに、ALPプロモーター領域のTCF結合部位を含むレポーターベクター(代表者が以前作成したもの)を用いて、同様にルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、抗Dkk1抗体を添加した細胞で、レポーター活性が有意に増加した。抗Dkk1抗体は、TCF結合部位を介してALPの遺伝子発現を増加させることが示唆された。
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