本年度は歯周病原菌のなかでもred complexといわれ特に歯周病との関わりが深いと考えられているT.denticola、P.gingivalis、T.forsythiaの3菌種についてバイオフィルム形成と宿主細胞侵入性について調べた。 1)バイオフィルム形成 今回、我々はT.forsythiaのバイオフィルム形成にはOxyRというタンパクが関与している事を明らかにした(Microbiology : 投稿中)。今後T.denticola、P.gingivalisがT.forsythiaのOxyR発現に与える影響を調べる予定である。 2)細胞侵入性 T.denticolaはこれまで宿主細胞内へ侵入しないと考えられてきたが、我々の研究によりヒト歯肉上皮細胞へ侵入することが明らかになった。さらにこの侵入には表層プロテアーゼであるDentilisinが関与していることがわかった。一方、P.gingivalisの侵入はF.nucleatumが同時に存在すると促進される事がわかった(FEMS Medical Microbiobgyにて発表2008)。T.denticola、T.forsythiaはP.gingivalisの細胞内侵入を促進せず、予想していた結果とは違う結果が得られた。今後は侵入メカニズムと各菌種のコミュニケーションを解明していく予定である。 以上のようにバイオフィルム形成、宿主細胞侵入に関わる分子を解析する事により、バイオフィルム形成に関与する病原性を発揮する因子を標的としたバイオフィルム形成を抑制することも可能になる。また、侵入メカニズムや各菌種間のコミュニケーションが明らかになれば歯周炎の発症だけでなくその進行を食い止める事にも大きなアドバンテージとなり得る。
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