研究概要 |
最終年度である本年度は口腔内病原菌のなかでもred complexといわれ特に歯周病との関わりが深いと考えられているT.denticola、T.forsythia,P.gingivalisの歯周病原性細菌と、口腔レンサ球菌についてとバイオフィルム形成や宿主細胞侵入性などによる口腔内定着機構、さらにはその阻止方法について調べた。 口腔細菌の口腔内定着機構:今回、我々はT.forsythiaのバイオフィルム形成にはOxyRというタンパクが関与している事を明らかにした(Microbiology:2009)。また、T.denticolaはこれまで宿主細胞内へ侵入しないと考えられてきたが、我々の研究によりヒト歯肉上皮細胞へ侵入することが明らかになった。さらにこの侵入には菌表層プロテアーゼであるDentilisin、宿主細胞膜におけるLipid raftが関与していることがわかった。一方、P.gingivalisの侵入はF.nucleatumが同時に存在すると促進される事がわかった(Microb Pathog 2009)。 定着の抑制:口腔レンサ球菌と一部の歯周病原性細菌において、フクフノリ抽出物のフノランが有効に働くことを明らかにした。これらの定着メカニズムの分析をすることにより、これらの分子を標的とした口腔内細菌の制御が将来的には可能になる。また、組織侵入メカニズムや各菌種間のコミュニケーションが明らかになれば歯周炎の発症だけでなくその進行を食い止める事にも大きなアドバンテージとなり得る。
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