研究概要 |
歯周病は細菌感染による慢性炎症疾患であるが、病態の解明は部分的で病原因子に対する生体側の反応は明確でない。そこで,歯周病の治療を進歩させるために生体側の病態の解明が必須である。そこで,実験的歯周炎モデルの確立は,歯周炎の発症機構の解明に有効である。 本研究の目的は,骨吸収関連の遺伝子改変マウスを用いて歯周炎モデルを作製し,歯周炎に対する骨吸収関連遺伝子の役割を生体レベルで解析することである。更に,歯周炎モデルに歯周治療薬を投与して,薬の効果を評価することである。平成21年度は,骨吸収遺伝子であるRANKLの強発現マウス(RANKL-TG)とOPGの遺伝子欠損マウス(OPG-KO)における歯槽骨吸収量を評価した。RANKL-TGとOPG-KOは,長管骨と同様に歯槽骨量を低下させた。その低下量は,OPG-KOの方が多かった。更に,ヒトと同様にCEJ-ABCの距離を測定して,歯槽骨の喪失を評価した。その結果,OPG-KOでは,wild-typeマウスに対して約2倍の歯槽骨の喪失が観察された。一方,RANKL-TGは歯槽骨の喪失は認められなかった。これらの結果より,OPG量の低下が歯槽骨の喪失に重要であることが明らかとなった。次に,骨吸収抑制薬であるビスホスホネートをOPG-KOに投与した。その結果,ビスホスホネート投与により,腰椎の骨密度は有意に上昇した。OPGO-KOの歯槽骨量の減少および歯槽骨喪失を防ぐことが出来た。以上の結果より,OPG-KOマウスは歯槽骨喪失の新規モデルであることを見出した。このモデルにより,歯槽骨吸収に対するビスホスホネートなどの骨吸収抑制薬の評価を行うことが出来る。OPG-KOは歯周病の病態解明及び治療薬および治療法の開発に有効なモデルである。
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