我々は、Wnt5aが共受容体Ror2を介し、破骨細胞分化を促進することを明らかにしている。そこで、歯周病による歯槽骨破壊にWnt5aが関与するかを明らかにする為、以下の実験を行った。1.Ror2のmRNA発現は、破骨細胞、破骨前駆細胞で認められ、Wnt5aのmRNA発現は骨芽細胞と破骨細胞で高発現していた。2.マウス骨髄細胞と骨芽細胞を共存培養し、活性型ビタミンD_3の添加により破骨細胞を形成した。この破骨細胞を含む画分を象牙切片上に播種し、Wnt5aのデコイ受容体であるGST-soluble Ror2を添加培養し、骨吸収活性を観察した。GST-sRor2を添加すると、吸収窩形成は濃度依存的に抑制された。この結果から、Wnt5aは破骨細胞による骨吸収を調節することが示唆された。3.吸収活性に及ぼすWnt5aの作用を解析するため、野生型、Wnt5a欠損およびRor2欠損由来マクロファージ(Mφ)を象牙切片上でRANKLとM-CSFを添加して培養し、破骨細胞へ分化させた。野生型マウス由来Mφと同様に、Wnt5aあるいはRor2欠損Mφは破骨細胞に分化した。しかし、Wnt5a欠損およびRor2欠損由来破骨細胞によるアクチンリング形成および吸収窩形成は、野生型由来破骨細胞に比べ著明に低下した。またWnt5a欠損マウス由来破骨細胞にWnt5aを添加すると骨吸収活性が回復した。 以上のことから、Wnt5a-Ror2シグナルは破骨細胞の骨吸収活性をポジティブに調節することが明らかになった。そしてWnt5aがRor2を介して破骨細胞の明帯の形成を調節し、骨吸収活性を制御する可能性が示唆された。またGST-sRor2は破骨細胞の分化のみならず、骨吸収機能を阻害することから、GST-sRor2は歯周病の治療に応用できる可能性が示唆された。
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