研究概要 |
細菌感染による慢性炎症性疾患であり局所の歯槽骨吸収を伴う歯周炎と閉経による女性ホルモンの低下が発症に関与する全身の骨代謝性疾患である骨粗鬆症との関係を解明するため多くの研究が報告されている.しかしながら,閉経によるエストロゲン低下と歯周局所の歯肉溝滲出液中のサイトカインの動態との関係についての報告は,数少ない.そこで,本研究では、閉経後骨粗鬆症に起因する全身の骨量減少と歯周病に起因する局所の歯槽骨吸収の関連性を見出すことを目的として,歯肉溝滲出液中のサイトカインプロファイルの検討を行った。 閉経後女性では閉経前女性と比較してエストロゲン量は有意に減少していたが,骨代謝マーカーであるN端テロペプチドや骨型アルカリフォスファターゼには有意な差が認められなかった.また,骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネート製剤の影響についても検討を行ったが有意な差は認められなかった.一方,歯肉溝滲出液中のサイトカインプロファイルの検討では,炎症性サイトカインであるIL-1α,IL-1β,TNF-αなどの発現が閉経後女性で高い結果であった.またビスフォスフォネート製剤による骨粗鬆症治療を受けているものにおいて歯周局所の各種サイトカイン発現に差は認められるものの特徴的な傾向ではなかった. 本研究の結果より,閉経後女性において女性ホルモンの欠乏が歯周局所のIL-1やTNF-αなどの様々な炎症性サイトカイン産生に影響を及ぼすことが示唆された.
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