研究概要 |
疫学的並びに歯周病関連細菌を感染させた動物モデルでの研究から,歯周病は動脈硬化症の発症および進行ひいては冠動脈硬化性心疾患との関連が示唆されている.しかしながら,歯周病がこれら疾患とどのように関連しているのか満足いく証拠は示されていない.歯周病患者は,動脈硬化症との関連が示唆されているanti-PCやanti-CLといったanti-phospholipid抗体の血清レベルが上昇している.我々は anti-phospholipid抗体価の上昇している歯周病患者において,LDL,P.gingivalis,活性化血小板,アポトーシス細胞等は,オプソナイズ化され,動脈局所における炎症反応を促進ひいては動脈硬化症を進行させるという仮説を立てた.具体的には,酸化LDLやP.gingivalisとanti-PCの免疫複合体による樹状細胞(単球/マクロファージ)からの免疫調節作用を明らかにすることを目的とした. anti-phospholipid抗体でオプソニン化した酸化LDLにより活性化した樹状細胞は,NK細胞からの早期IFN-g産生を誘導した.一方,CRPとoxLDLの免疫複合体及びP.gingivalisとanti-PCの免疫複合体は,同様の作用を認めなかった. 本研究の結果より,歯周病患者におけるanti-phospholipid抗体価の上昇が,局所における炎症反応を増強し,ひいては動脈硬化症の進行を促進する可能性が示唆された.
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