自閉症は情報認知と処理に問題のある疾患であり、歯科的環境ではパニックなどの不適応行動を呈する場合が多い。様々なストレスのかかる状況ではあるが、情報提示方法を工夫することにより、歯科的環境での適応をはかるため、自閉症者に対する適切な情報提示方法の客観的評価を脳機能学的に行った。 情報提示方法は、自閉症者が比較的得意と官ら得られている視覚的情報提示(写真を用いた提示)、情報処理が苦手とされる聴覚的情報提示(口頭での説明)、両者を同時に行う情報提示の3種類とした。光脳機能イメージング装置を用い、20代健常成人に各種情報提示法を実施し、脳機能測定ならびに、口腔内についての考えや、研究実施後のわかりやすさのアンケート調査を行った。 健常成人においては、各情報提示方法のうち視覚的情報提示と聴覚的情報提示を同時に行う方法が、左言語野などの領域に最も活動が認められる傾向にあり、次に視覚的情報提示が聴覚情報提示をやや上回って続いた。 一方、研究後に実施したアンケートによる被験者の主観的評価については、視覚的情報提示と聴覚的情報提示を同時に行う方法がわかりやすいと感じたという傾向がみられたが、かなりばらつきがあり、中には聴覚的情報提示と視覚的情報提示については、それぞれ、最もわかりやすいあるいはわかりにくいと感じたというものもみられた。健常成人において、客観的評価として用いている脳機能学的評価と、主観的評価の一致ないしは異なる傾向が認められたことも、今後の重要な検討課題であり、健常成人のみならず自閉症などの発達障害への様々な対応時に、活用しうるべき重要な結果であると考えられた。
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